子どもの頃はメディアの主役といえばテレビだった。家では常にテレビが点いていたし、毎日見たい番組があった。インターネットに出会ってから、少しずつそこにのめり込むようになった。そこにはテレビにはない面白さがあったからだ。敢えて悪い言い方をすると、無法地帯のようなものだ。イケナイ場所のような感覚があった。しかしそれは現実に対してそれほど大きな影響を及ぼさない、秘密基地のような場所でもあった。

大学生になり一人暮らしを始めて自由を手に入れた。そこから徐々にネットの世界にいる時間の比率が高くなり、テレビを見なくなっていった。テレビは綺麗事ばかり。ネットにこそ真実がある。そんな陰謀論的な感覚に片足を突っ込んでいたような気もする。その頃ぐらいだろうか。「テレビ見てない自慢」なんて言葉を目にするようになった。これはつまり、「大衆が楽しんでいるテレビなんて俺は興味ない。」というちょっとした優越感のような感覚があったのだろうと思う。そんな大衆とは違う自分。それを敢えて声高に主張することに対する揶揄が込められた言葉だ。裏を返せばテレビを見てないことが少しカッコいいと思われていたということでもある。まぁ確かに大衆に流されないことはある意味カッコいい。その感覚は分からなくもない。

スマートフォンが普及し、誰もがネットに触れるようになった。テレビを見てないことなんて自慢にすらならなくなったように思う。それが当たり前だからだ。そんな時代になりふと思う。そろそろ「ネット見てない自慢」という言葉が出始めてもいいのではないか。今の時代ネットに触れずに生活を送ることは難しい。スマートフォンを持っていないと日常のあらゆる場面で不便だと感じるようになってしまった。だからこそ「大衆が群がっているネットを見てないということがカッコいい」なんて価値観が生まれてもいい頃ではないだろうか。僕は最近SNSを遠ざけるようになったし、積極的にテレビを見ている。まぁ実際に今も昔も一番好きなメディアはラジオなのだが。とにかくそれはさておき、今の時代ネットを見てないことの方がカッコいいのではないかと思っている。そんな価値観を声高に主張し、それが揶揄されるくらいまで浸透することを切に願う。だってテレビの方が圧倒的にまともだと思う。入念に取材を重ね、下手なことを言ってしまわぬように細心の注意を払う。もちろん人である以上間違いは起こす。間違いが起きたら反省して、次に活かせば良い。だから僕はテレビを信頼している。そんな風に思っている大衆とは違う自分。こんな自分を揶揄してくれ。「ネット見てない自慢するな」って。そんな世界の方がまともだと思うから。